作品の色 –プリントを仕上げるように現像を。
ご覧いただきありがとうございます。
フリーランスで、デザイナー・カメラマン・写真作家として活動しております。国井祐輔です。
今回は僕の写真の色と、RAW現像仕上げについてのお話を。
事のはじまり
ここ数年はフジ機の出す色に満足していた(撮って出し至上主義)。工数的にも圧倒的にコスパが良く、ビジネス面においても合っていた。
一方で「作風」や「自分の色」と言い切るには芯をくわない感覚も残っていた。
ある日のVoicy投稿から聞こえてきた言葉。
「マーケティングや届け方を言い訳にするな。君の作品が未だ話題になっていないのなら、それは単純にクオリティが足りていないという事。」
曖昧さをいつまでも引きずらず、しっかり向き合わねばと思った。
とはいえ、「作家性」を生み出す要素は数多く、一朝一夕にはいかない。
しかし先日、自分の理想的なカメラを見つけたことにより、画質や色についてはようやく前進できそうな気がした。
いや、着手しなければいつまでも前に進んではくれない。といった方が正確なニュアンスかもしれない。
色を模索する
こうして数年ぶりにRAW現像と向き合うことになったのだが、どこかから手に入れたプリセットで満足する事だけは違うと感じていた。「なんでこの色?」という疑問が自分の中に残ってしまうから。
ここで必要なのは、やはり作家としての方向性だろう。自分は何を表現したいのか。心地よいと感じる写真はどれなのか…。
写真史、レタッチ、画質の成り立ちや写真の教科書まで。様々な本からインスピレーションを得る。(機会があれば、いつかそれぞれの紹介記事も書こうかな)
ほどなくして、これだと思える空気感の写真集と出会うことができた。Luigi Ghirri「Kodachrome」と鈴木理策「Saskia」。
例えるなら「休日の朝、まだ誰も起きてこないリビングで感じる爽やかな青」がどこか懐かしく、僕の心象風景の色彩にピタリと一致した。奇しくも、共にコダックフィルムの色合いだ。
今回調べて知ったのだが、コダック(アメリカのメーカー)は、白人の肌向きに青・黄の傾向が強く、フジ(日本のメーカー)は黄色の肌に合わせているから、赤みが強いのだとか。
オリジナル・プリセットの完成
僕はもともとグラフィックデザイナーなので、デジタル上で調整を始めてしまうと、本当に終わりなくどこまでも出来てしまう。大切なのはゴールを決めること。何の為にこの作業をしているのかを見失わないこと。
だから現像作業にあたり、「従来の写真プリントで可能なこと」を1つの判断基準として設けることにした。(とはいえ、覆い焼きやスポッティングまで含めると、大体のことが可能ではあるのだが)
僕の現像のゴールは「自然で美しく、日常的で懐かしい」
自然 : 心地よい色合い、澄んだ空気の様な透明感
美しい : 美しい光や陰影、現場での自分の視点を表現
日常的で懐かしい : 「休日の朝」のような、どこか懐かしい空気感。邦画の平日昼間のシーンに出てくるような時の止まっているかの様な感覚。心象風景。
この軸を持った上で、少しずつ改善をしながら、作風への昇華を試みたい。
フィルムから手焼きプリントをするイメージで、デジタル上のキャンパスにプリントを。
撮って出しの大量生産から、1枚ずつ仕上げるスタイルへ挑戦していきたいと思う。
(2021.6.7追記)
もう一つ、心震える写真集と出会った。川内倫子「as it is」。
上記の色彩とはまた異なるのだが、琴線に触れる光・自然さ・懐かしさ。まさに思い描いていた空気がそこにあり、またその作家表現にはただただ圧倒されるばかりだった。
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